あしたのあなたへ

武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部 林 猛教授

 誰でも無いあなたへ。

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受け継がれているもの

 私の研究分野は民俗学です。民俗学とは国や地域の風俗や習慣、風習といったものから、そこに住む人たちの考え方や生き方、特色を解き明かしていく学問なのです。民俗学者は自国について研究するのが一般的で、私も日本を研究対象としています。

 私が日本の基層的な文化を研究対象とする民俗学の研究をしたいと思ったのは神主の家に生まれたという出自だけでなく、大学に入ってから学んだ日本民俗学の父である柳田國男に魅せられたことで決定的になりました。

 日本人は単一民族で、隔たりがなく、あまり違いもない。そんなことを聞いたことはないでしょうか。確かにある一面では間違いではありませんが、日本人は歴史的にみるともっとダイナミックな民族で、多種多様な習俗、風習、習慣の影響を受けています。

 そこで気づかされるのは日本人の柔軟性です。たとえば木と紙だけの住宅文化を持っていた日本が、明治維新後に石の住宅文化を持つ欧米の影響を受け、さまざまな建築物を作ってきました。一方でそれまでの建築様式も残し、欧米の様式と融合させてきました。皆さんの中にも和室のあるマンションに住んでいる方は多いと思います。

 このように日本人は圧倒的とも思える他の文化を受け入れ、それに染まってしまったように見えながら、自分たちが持っていた文化と融合させ、新たな文化として日常生活に定着させてきたのです。皆さんにはこの“柔軟性”がしっかりと受け継がれているはずです。

 「個性がない」…そんな悩みを持っている人が案外多いものです。でも、光り輝く個性などは、夢物語なのかもしれません。周囲の人や環境に影響を受け、それを取り入れた先で、個性的な自分に出会えるのではないでしょうか。

 自分の柔軟性を信じ、大学で異なったことに触れながら。誰でもない“あなた”になってください。