あしたのあなたへ

武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部 久保田哲准教授

 疑う苦しみ、疑う歓び。

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知られていないことを

 私の専門は近現代の日本政治史です。明治以降の日本の政治を研究しています。

 日本の政治史といって最初に思いつくことは、高校の日本史の教科書に載っている内容ではないでしょうか。私自身、大学生の頃は友人に「そんなのは高校の教科書に載っていることを勉強するようなもんじゃないか」と言われ、そうだなと、妙に感心したものです。

 皆さんは研究者というと、その専門分野に関して何でも知っていると思っていませんか。確かに研究者ではない人よりは知識は豊富かもしれません。でも、既存の知識を多く頭に詰め込んでいるのが研究者ではありません。現在、知られていないことは何かを知っているのが研究者なのです。そして、現在、通説とされていることに疑問を持ち、それとは異なる考え方や事象を見つけ出すのが真の研究者なのです。

 しかし、現在、知られていないことを見つけ出し、それを一つの事象に組み立てるのは大変な作業です。しかも、組み立てられるのかどうかもわかりません。結局、何の結果も得られずに、あきらめざるを得なくなることだってあります。

 たとえば、「狭山市の100年前の今日の天気はどうだったのか」という課題があるとします。おそらく気象庁に100年前の狭山市の天気のデータなんて残っていないでしょう。新聞に天気予報が載っているかもしれません。でも、予報であって、本当の天気はそれではわかりません。では、どんな資料を探して、それを証明するのか……。それが研究の始まりなのです。

 最近は「すぐに役立つこと」を学ぶ傾向が強いような気がします。しかし、すぐ役立つことは、「すぐに役立たなくなること」なのです。

 皆さんには大学に入って、教員が話したり、板書したりしたことをノートに取るだけの勉強以外にも、わかっていないことを探してそれについて調べたり、「普通はこうだ」と言われていることに疑いの目を向け、本当はどうなのかを調べたりすることにも挑戦していってほしいのです。

 先ほども触れましたが、それは大変な作業です。時間もかかるし、まったく出口が見つからず、途方に暮れることもあるでしょう。でも、だからこそ答えが見つかった時の歓びは、ただ教科書に書かれていることを覚えることをはるかに凌駕しているはずです。

 大学の4年間。いろいろなことにチャレンジする中で、研究者が挑んでいる途に触れてみるもの、いいかもしれませんよ。