あしたのあなたへ

武蔵野短期大学幼児教育学科 小山一馬准教授

ビビらないで。

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作る目的

 授業で学生に伝えているのは作り方や描き方を教えることが目的じゃないということ。何かを作ったり、描いたりする時に「制作過程で危険性をどう教えるのか」、「順番待ちなどの社会性をどう学ばせるのか」といったことが大切で、作品は丁寧に作られていればいいのです。作り方や描き方を教えるんじゃないんだということですね。

 どうしても中学校や高等学校の美術の授業は出来栄えで評価される。でも、幼児教育者として子どもに教える時には、そこに力点を置いちゃいけないと思うんです。だから、たとえ工作をしたり、絵を描いたりが得意じゃない人でも、ビビる必要はないんです。なんといっても就学前の子どもができるようなことしかしないわけですから、不得意でも全く問題ないんです。

 むしろ大切なのは応用力です。たとえば「××レンジャーの絵を描いて」って、子どもに言われた。そこで「ごめんね、先生描けないんだ」じゃダメなんです。「それは描けないけど、これなら描けるよ」って、もっていく。「出来ない」じゃなく、「できることで、どう対処していくか」の発想力が問われるわけです。

 そもそも描いたり、作ったりした時点でそれは「ウソ」なわけですよ。逆に考えれば、表現方法は無限で、ピンクの象を描いたっていいわけです。問題はさっき言ったとおり、そこで子どもに何を身に付けさせたいのか、ってことなんです。

 あと、他人のものをみると独創性が発揮できなくなるので、自分で考えるようにしなさいという指導を学生にする方もいらっしゃいますが、それは違うんじゃないかと思うんです。むしろマネをする。マネをしても完全にコピーすることなんかできません。そこに大なり小なり自分のオリジナリティが入ってくる。だから、子どもに教える時に、図工室みたいに大きなテーブルで、ほかの子が作っているものを自由に見ることができる環境づくりは大切なことだと思います。みなさんもオリジナリティを大切に思うんだったら、どんどんマネしてみてください。

 幼児教育者は子どもたちと作品を作ることだけを目的で教えているわけじゃありません。楽しくてきれいなものを作る過程で、人として身に付けておくべきことを教えるのが大切なことです。何も作家になろうというわけではなんですから、美術というジャンルでの技術なんか気にせず、自分らしさを発揮して、いろいろと学んでいってほしいですね。